内部ラグ・外部ラグ

更新日:

 

 経済政策や財政政策を策定し、それを実行したとしても、それが
直ちに効果を現すわけではない。

 

 金利や株価のようなモノは政策策定時に反応するにしても、実経
済が反応するのはずっと先である。

 

 このような政策実施と効果の間にある時間的ズレを「タイム・ラ
グ」と呼び、そしてさらに経済学者達はこれを「内部ラグ」と「外
部ラグ」に分ける。

 

1)内部ラグ:

 

 経済に対するショックとそのショックに対応する政策行動までの
時間的ズレをを「内部ラグ」という。
 これは経済に対するショック、たとえば石油価格の暴騰とか自然
災害とか、が経済に与える影響の大きさをや対応考えている間に時
間がたってしまう、、、と言う感じのズレである。

 

 

2)外部ラグ:
 政策が実施されてからその効果が出るまでの時間的ズレを「外部
ラグ」という。
 これは経済政策が直ちに所得や支出、そして雇用に反映したりは
しないからである。 

 

「雇用創出100万人!」
などと言った政策を行っても、直ちに政府が100万人だけ人を雇
い入れるわけではないからすぐに雇用は増えない。

 

 雇用がすぐ増えなければ所得もすぐ増えないから、支出もすぐ増
えない。

 

 GDP の6割~7割をしめる個人消費がすぐ伸びないなら、当然経
済政策実施と経済の浮揚との間には時間的ズレが生じる。
 これがつまり「外部ラグ」である。

 

【経済へのショック/変化】   -----------
 ↓                ↑
【ショックや変化の認識】
 ↓               ここまでが内部ラグ
【政策の模索】
 ↓                ↓
【政策の実施】         -----------
 ↓                ↑
【政府支出・民間投資の変化】
 ↓
【企業所得の変化/雇用の変化】  この間が外部ラグ
 ↓
【家計所得の変化】      
 ↓                ↓
【政策の効果発現】        -----------

 

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 そういったわけで、経済政策が効果を現すまでには時間的なズレ
が生じる。

 

 特に財政政策(政府支出や租税率の変化)は、利害関係の調整に
えらくかかるから、内部ラグが長期間になる。

 

 そして金融政策も大きなタイムラグを持つ。

 

 金融政策とは利子率や貨幣供給量などを変化させる政策であるが、
利子率を下げて投資を促そうとしても、企業や家計はそんなに頻繁
に投資計画を変更するモノではないから、半年以上の長期間の外部
ラグが発生する。

 

 これらのラグはどうしても発生してしまうモノだから、政策によ
って経済を安定化させるのは非常に難しい。

 

 たとえばインフレが沈静化していると判断して貨幣供給量を増や
したり、利子率(公定歩合)を下げたりしたら、予想に反してイン
フレが生じ火に油を注ぐようなことになったり、逆に加熱しすぎの
経済を沈静化しようとしたら予想より早く沈静化してしまい、かえ
って不況を長期化させてしまったり、、、

 

 そういうわけで経済を安定化しようとする経済政策が、かえって
経済を不安定化させ、だから「政府は何もするな」と主張する経済
学者も多い。

 

 だからそれに替わる仕組みとして、様々な「自動安定化装置(ス
タビライザー)」が考えらている。

 

 たとえば法人税や所得税などは、収益や所得に比例する形で課せ
られるが、これは不況時に支払わなければならない税金を減らす仕
組みである。

 

 また日本の殆どの企業が採用しているボーナス制度も企業の業績
に比例した形で支払われるので、企業の業績が悪ければ報酬(賃金)
の支払いが減って企業の業績悪化を少しばかりくい止める働きを持
っている。

 

 失業保険や様々な福祉プログラムの存在も景気の後退期には大き
な意味合いを持つ。というのもそれは人々の所得の減少をしばらく
の間くい止め、消費の大幅な減少をくい止めるからである。

 

 スタビライザーとして様々な制度がある故に経済はやや安定化す
るが、しかし金融・財政政策によって経済は不安定化する場合があ
るのは避けられない。

 

-----------
■先行指標と経済モデル
-----------
 経済政策が妥当なモノであるためには、どうしても半年後・一年
後・二年後、、、といった先の状況を予測しなければならない。

 

 将来の経済状態が予想できなければ、やらない方がよいような政
策を行ってしまうことになる。

 

 その将来の経済状態を予想するために利用されるのが「先行指標」
と「経済モデル」である。

 

 経済の予想家達は、様々な先行指標と経済モデルから将来を予想
する。

 

 その中にはほぼ予想の範囲内に変動が収まる指標(たとえば2020
年には高齢者比率が最高になるなどの人口の変化や年齢構成)もあ
るし、株価などといった予想とはまるで違う動きをする指標なども
ある。

 

 住宅の着工件数、新しい設備投資の発注件数(あるいは金額)、
各業界の来年度の新卒採用人数、、、そういった情報を自らの経済
モデルに代入して将来を予想する。

 

 もちろんその中にはピッグサイクルや経済循環説を適用したり、
資本と労働から計算した生産性のみで判断したりと、生産力が桁違
いに低かった時代の理論や経済がグローバル化する以前のモデルを
使ったりしているモノもあって、まず当たるようなものではない。

 

 経済現象にかかわらず人間にかかわる現象は、予測するのがかな
り難しいのである。

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