メニューコスト/協調の失敗

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 賃金や価格がなぜ、需給バランスに基づいた水準に速やかに調整
されないか? という問題には様々な解説がなされる。

 

 新古典派の研究者は「リアル・ビジネス・サイクル理論」を唱え、
新しいケインジアンは、メニューコストでそれを説明しようとする。

 

 リアル・ビジネス・サイクル理論についてはまた後日、、たぶん
二三ヶ月後に読むことになるが、ここではケインジアンのメニュー
コスト論についてである。

 

 で、そのメニューコスト論とは何かというと、
「価格を変更するには、様々なコストがかかる」
ということである。

 

 一番分かりやすいのがレストランのメニューに記される価格で、
これを変えるにはメニューを新しく印刷せねばならない。

 

 もちろん印刷するコストのみがかかるわけではなく、新しい価格
を決めるという作業自体ににもコストがかかる。

 

 というのも新しい価格を決めるというのは結構戦略的な問題であ
り、かならず同業他社や競合他社の動向を探ること抜きには考えら
れないものだからである。

 

 ここ最近の電話会社の「マイライン狂騒」なんていい例だろう。

 

 A社が値下げを発表したらB社はさらに大きな値下げを図る。
 シェアでは圧倒的なN社も値下げに踏み切らねばならなくなるし、
全然別のシステムであるIP電話の価格も気にしなければならなくな
る。

 

 おかげでメニューコストは膨大だ。CMは毎回新しく作ることに
なるし、パンフレットなどの宣伝材料も何回も印刷することになる。

 

 また値下げが企業の利益を帳消しにするような大きさであれば、
企業は需給バランスの均衡する価格に自社の価格を設定しない場合
もある。

 

 よく言われる「価格の下方硬直性」というやつであるが、とにか
くそういうわけで価格を下げるのにはいろいろなコストがかかる。

 

 価格の変更にコストがかかるならば、そのコストより利益が大き
くなる時点まで価格の変更は行われない。だから需給バランスが変
化しても価格はすぐには変化しない、、、というのがメニューコス
ト論による説明である。

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賃金と価格の跛行性

 

 世の中の企業は価格をそんなに頻繁に変更しはしない。

 

 毎月PCサーバーの値下げをしているようなCompaqですら、価格の
変更は最短で一か月である。

 

 だがもし企業が価格を毎日のように調整したとしても、賃金は毎
日調整されると言うことはない。

 

 その結果、価格や賃金の変更は跛行的になる。

 

 つまりA社だけ価格を下げ、次にB社だけ価格を下げ、次にC社
とD社が価格を下げ、、、と、価格調整に時間差が出るのである。

 

 その結果、価格の調整が需給バランスによる均衡価格に一致する
のが緩慢になってしまう。
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★はこう【×跛行】
つりあいがとれない(まま進む)こと。
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