ラスパイレス指数とパーシェ指数

ラスパイレス指数とパーシェ指数

ラスパイレス指数

 さてここで前回登場したGDPデフレータについて思い出してみ
る。

 

 GDPデフレータとは、名目GDPを実質GDPで割ったモノで
あった。これを積の式に変換すると

 

{名目GDP}={実質GDP}×{GDPデフレーター}

 

であった。

 

 この式から実質GDPは基準年と比べた場合の「取り引きされた
財やサービスの増減」の成分であり、一方GDPデフレータは
「基準年と比べた物価の上昇」の成分であることがわかる。 

 

 となると物価に関してGDPデフレータとCPIという二つの指
数が存在することになる。これらは何が同じで何が異なるのだろう
か?

 

 第一の相違点は、デフレータがその年に取り引きされた全ての財
やサービスを対象にしているのに対し、CPIは消費者によって購
入された財やサービスのみを対象にしていることである。

 

 すなわち企業が購入した財やサービスはデフレータには反映され
るけれども、CPIには反映されないわけである。

 

 第二の相違点は、GDPデフレータは「国内で生産された財やサ
ービス」を対象にしているが、CPIはどこの国で生産された財や
サービスでも、その国の消費者によって購入されれば対象になる。

 

 つまり輸入車の価格は日本のデフレータには影響を及ぼさないが、
CPIには影響を及ぼす。

 

 第三の相違点は、CPIは「固定的なウエイト」を用い、GDP
デフレータは「可変的なウエイト」を用いていることである。

 

 つまりCPIは問題にしている年も基準年も対象としている財や
サービスの数量は同じであるので、たとえば1993年のように米が大
不作になって米の価格が暴騰しても、消費者は米を普通の年と同じ
だけ購入するモノとして計算されるわけである。

 

 もちろん価格が暴騰すれば消費者はその財やサービスを購入する
のをためらったり量を控えたりするわけだから、消費者物価指数は
思ったほど正確には物価状況を反映していないのである。

 

 このような固定的なバスケットを用いる価格指数を特に
「ラスパイレス指数」
という。

 

 ラスパイレス指数は今考えたように、物価の上昇を過大に評価し
てしまう。

 

 つまりこのやり方では消費者の代替行動、すなわちあるモノの値
段が上がればそのモノを買う量を減らし、代わりに別の安いモノを
たくさん買うという行動が加味されていないから、必要な商品はい
くら高くても買うものだという仮定の下に計算されているのである。


パーシェ指数

 一方GDPデフレータの方はと言うと、可変バスケットを計算の
対象としている。

 

 このような可変バスケットを用いる価格指数を特に
「パーシェ指数」
という。

 

 パーシェ指数はラスパイレス指数のように消費者の代替行動を無
視しないから、物価上昇を過大に評価しない。

 

 だがそうだからといってラスパイレス指数よりパーシェ指数の方
が意味があるかと言えば、そうでもない。

 

 なぜなら買いたいモノが高いから代わりのモノを購入するという
のは、消費者の満足という観点からはマイナスなのである。

 

 すなわちそれは「効用の減少」を意味するから、パーシェ指数で
あるGDPデフレータは物価の上昇によって消費者が被る打撃を過
少に評価してしまうことになる。

 

 結局のところ価格指標としてどちらが優れているかということは
ない。

 

 価格指標としてCPIを用いるか、それともGDPデフレータを
用いるかは、実行する政策や対象の性質によるのである。

 

 公共プログラムや民間契約(たとえば労働者の最低賃金決定など)
に関する問題では、CPIを使って議論することが多い。

 

スポンサードリンク

このエントリーをはてなブックマークに追加