インフレの社会的費用
インフレの社会的費用
/Let's Challenge Economics!/Macroeconomics/N.Grebory Mankiw/
mag2 ID:25929
マンキューも読むのでR!
第025回(2000/06/22)
第六章・貨幣とインフレーション(6)
「インフレの社会的費用」
-------------------------------------------------------
このメルマガは、グレゴリー・マンキュー箸のマクロ経済
学1・2(東洋経済新報社・刊)を中心テキストにし、マク
ロ経済学をゼミ風に勉強しようというメルマガです。BNは↓
http://www.asahi-net.or.jp/~GA2A-MYZK/index.html
-------------------------------------------------------
/Let's Challenge Economics!/Macroeconomics/N.Grebory Mankiw/
------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------------
インフレの社会的費用
------------------------------------------------------------
----------
■予想されるインフレの影響
----------
インフレとは結局貨幣需要量と貨幣供給量のアンバランスによっ
て生じる問題である。
しかしインフレが起こると社会的には様々な費用がかかる。
----------
1)靴底コスト:
----------
たとえば高インフレは名目利子率を押し上げる。
名目利子率が高いと言うことは、貨幣を手元に持っているとドン
ドン財産が減る(貨幣の保有コスト=名目利子率)ということだか
ら、人々は本当に必要な最少限だけ貨幣を手元に置き、残りは銀行
などに預けておくことになる。
そうすると(極端に言えば)毎日銀行から必要なだけお金をひき
ださねばならないことになり、そのために費用が余計にかかる。
つまり週一回銀行に行くより週五回銀行に行く方が靴底が減るこ
とになるから、このような費用を「靴底コスト」などと呼ぶ。
----------
2)メニュー・コスト:
----------
またインフレが起こると、企業は生産する財やサービスの価格を
引き上げなければならなくなる。
そうなると販売店にその旨を伝えたり、値札やPOPやパンフレ
ットを新しくしなければならないから、そのための費用がかかる。
このような費用は「メニュー・コスト」と呼ばれる。
すなわちレストランがメニューの値段を替えるための費用である。
----------
3)資源配分の非効率化:
----------
農産物などの商品は、毎日のように市場で取引をされ価格が調整
される。
だがしかし企業の生産する財やサービスの価格は、そう頻繁に調
整されないから、インフレがあっても値上げをするまでに何ヶ月も
何年も間が開いたりする。
すなわちその間は、ミクロ経済学で言う「均衡価格」とは違う価
格で市場に提供されていることになり、それは厚生経済学の基本定
理による「資源配分の効率化」が達成されないと言うことである。
これは共産主義国の統制価格経済を思い出すとわかるが、そうい
うわけで資源配分の非効率化が生じるわけである。
----------
4)税収への影響
----------
インフレは税収にも影響を及ぼす。
税制は基本的に名目価格に対して設定されるモノだから、インフ
レが起これば起こるほど税金がかかることになる。
たとえばキャピタル・ゲイン税率を10%としよう。
そしてある株式の一株の価格が100万円としよう。
一年間でもしインフレが全く起こらず、その株式の評価が全く変
わらなければ、その株の一株の価格は変わらず100万円である。
だからこの株を一年後、手放しても売買利益は0であるから税金
は0である。
だがしかしインフレがあれば、企業の業績が変わらなくても株価
は上昇する。
すなわち一株100万円の株式が、一株140万円(インフレ率40%)に
なったりするわけである。
そうすると実質的に株価は上がっていなくても、40万円の売買利
益が生じることになり、四万円のキャピタルゲイン税を支払わねば
ならなくなる。
これはインフレによる「余分なコスト」である。
----------
5)物価水準の変動コスト
----------
インフレは、将来のために備えるのを難しくする。
たとえば老後に備えて今一億円の金を貯金したとしても、20年後
にその価値がそのままである可能性は低い。
それならいくら貯めておけばよいのだろうか、、、ということで、
余分に貯金したり、貯金するのを止めてしまったりする。
そしてもしハイパー・インフレなどが起こってしまえば、もうど
うしようもなくなる。
それに備えるために人間は地所を買ったり、アパートを経営した
り、株に投資したりと様々なことをするわけだが、もしインフレと
いうものがなければ、そのための費用は要らなくなる。
つまりインフレの存在によって、インフレに対処するための費用
がかかっているのである。
----------
■予期しないインフレの影響
----------
たとえば固定金利で長期の住宅ローンを組んだとする。
そうすると当然インフレで得をする人と損する人が出てくること
になる。
年10%の金利で住宅購入資金を借り入れても、インフレ率が10%を
越えれば資金の賃貸コストが0になり、借り手は丸儲けである。
しかし逆に同じ条件でインフレ率が0%なら、借り手は資金を借り
入れる費用を一割も支払わねばならないことになる。
高率のインフレは、そうしてたいてい借り手に有利に作用する。
そうして恣意的な富の再配分を引き起こす。
高率のインフレはまた同時に、不安定なインフレである。
来年も再来年もその次の年も同じ速度でインフレが進むとすれば、
人々はそれに備えることができるが、不安定だからそれに備えるコ
ストが余分に必要になる。
定額の年金を受け取っている高齢者はインフレによって実質収入
が減るし、貨幣の所有者もそのコストを支払わねばならなくなる。
そうなると大きな社会問題であるが、結局これは名目価値と実質
価値の乖離による問題であり、将来を的確に予測できないという限
定合理性によるモノである。
高率のインフレの社会的コストは、そういうわけで非常に大きな
ものとなる。
(つづく。次回からは「開放経済」の章)