資本の黄金律水準(前編)
資本の黄金律水準(前編)
/Let's Challenge Economics!/Macroeconomics/N.Grebory Mankiw/
mag2 ID:25929
マンキューも読むのでR!
第011回(2000/03/28)
第四章 経済成長
ソローの成長モデル(2)
「資本の黄金律水準(前編)」
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このメルマガは、グレゴリー・マンキュー箸のマクロ経済
学1・2(東洋経済新報社・刊)を中心テキストにし、マク
ロ経済学をゼミ風に勉強しようというメルマガです。BNは↓
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/Let's Challenge Economics!/Macroeconomics/N.Grebory Mankiw/
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前回の号の記述に、ちょっとした間違いがありました。
どこだったか、気づきましたか?
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■基本式
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・国民所得勘定の恒等式: Y=C+I+G+NX
・輸出入が無視できる場合→ NX=0
・NX=0の場合、経済の産出高Yは、その経済に存在する生産要素
(資本と労働)と生産技術(生産関数)によって、決定される。
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前回のおさらい
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■一人当たりの労働、一人当たりの生産関数
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NX=0の場合、経済の産出高Yは、その経済に存在する生産要素
(資本と労働)と生産技術(生産関数)によって決定されると考え
る。すなわち豊かな経済には豊富な生産要素と高い生産技術が存在
し、乏しい経済には生産要素も乏しいし生産技術も低い。
世界の様々な地域の経済状態を考えるために、一人当たりの生産
要素と生産関数を考えよう(※規模による収穫不変を仮定する)。
生産関数を労働Lで割るとY/L=F(K/L、1)であるから、
Y/Lをy、K/Lをkとすると、労働者一人当たりの生産関数fが
y=f(k) ただしk=K/L、
またf(k)=F(k、1)
という風に書けることになる。
この時「資本の」限界生産力MPKはf(k)の微分係数であり、
f(k+1)-f(k)で、以前にも述べたとおり「限界生産力は
逓減」する。
ここでこの一人の労働者の所得はyであるが、このyを労働者一
人当たりの消費cと労働者一人当たりの投資iに分けてみると
y=c+i
と書ける。で、貯蓄率sを0≦s≦1なるsを用いて表すと消費関
数cは
c=(1-s)y
となるから、投資i(貯蓄に等しい)は i=sy となる。
つまりsは、一人当たり生産から投資に回される率でもあるので
ある。
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■資本ストックの定常化(収束)
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減価償却率をδ(デルタ:小文字)とすると、ある年度の資本ス
トックの変化Δkは
Δk= i-δk
である。またi=sy=sf(k)であるから、
Δk = sf(k) - δk
である。
投資sf(k)と減価償却δkが釣り合うとΔk=0となるが、この
ような状態を特に「資本ストックの定常状態」と呼び、この時のk
をk*と書いて表す。
i、δk δk:資本の一人当たり減価償却
↑ /
| _――――――――sf(k):一人当たり投資
| / /
| / / ・
| / / ・
| / / ・
| / / ・
|/ / ・
| /_____________
0 k1 → k* ← k2 k
最初の状態がどのような状態であっても結局kは次第にk*に収束
していくことになる。
つまり当初一人当たりの資本量がk1(<k*)の状態であったす
れば、投資が減価償却を上回るから資本ストックkはk*までドン
ドン増える。
一方最初がk2(>k*)であれば、減価償却が投資より大きいか
ら資本ストックはドンドン減り、結局k*で落ち着くことになる。
今回のモデルから導かれる結果は「一人当たりの産出量yは長期
的には貯蓄率(投資率)sによって決まる」ということである。
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資本の黄金律水準
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経済の定常状態は貯蓄率(投資率)sで決まる。
そしてこのsは外生変数である政府購入Gや租税Tによって影響
を受けるから、経済の定常状態は政府の政策によって上下すること
になる。
ここでまず個人の所得勘定の式y=c+iから、c=y-iを導
いてみる。
というのも経済に属する個々人が最も関心を持つのは「どれだけ
の消費が可能であるか」ということであり、政策決定者が気を配る
のは個人の消費水準だからである。
さて定常状態では一人当たりの資本ストック量はk*であるから、
一人当たりの産出量はy=f(k*)となる。
定常状態とはΔk=0だからi=δk*で、これによって定常状態で
の一人当たり消費c*は、
c*=f(k*)-δk*
である。
この式は
{定常状態での一人当たりの消費}
が
{定常状態での一人当たりの産出量}と{定常状態での減価償却}
との「差」
であることを意味している。
y、δk δk*資本の一人当たり減価償却
↑ /
| _――――――― f(k*)一人当たり産出高
| / /
| /|c*gold
| / | /
| / /
| / /
|/ /
| /____________
0 k*1→ k*gold ←k*2 k*
k*での一人当たり産出量と一人当たり減価償却をグラフにすると
上のようなグラフになるが、これより c*=f(k*)-δk* を最大
にするある一点が存在することがわかる。
この c* を定常状態の消費を最大化する「黄金律」と呼ぶ。
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この時資本の限界生産物(資本量を1単位増やした時に生じる産
出量)MPKは、f(k*+1)-f(k*) で、一方資本を一単位増やした
場合の減価償却の増分は δ(k*+1)-δk*=δ であるから、ある
定常状態での消費 c*=MPK-δ である。
で、資本ストックの定常状態k*が黄金律より低い状態(k*1)であ
ると、「資本kの増加は消費の増加をもたらす」。
逆に資本ストックの定常状態が黄金律より高い水準(k*2)であると
「資本kの増加は消費の減少をもたらす」。
つまり資本ストックの定常状態が消費を最大となっている点では、
MPK=δ
となっており、
「経済が定常化している状態で消費を最大にする黄金律」
の点なのである。
(つづく;次回は資本の黄金律の後編)
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皆様からのおたより
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みちもとさん、こんにちは。
「組織の経済学」の方で二回ほどお便りした下松です。
マンキューの方も購読しております。
ソローの成長モデルによる日本と西ドイツの「奇跡」の解釈に関
するコメントです。
「奇跡でも何でもない」とする論理は、戦争による破壊によって、
一人当たり資本量kがk*よりも小さくなり、そのようなkの水準に
おいては、貯蓄率が戦前と変わっていない限り、投資率が資本減耗
率を上回るので、kの水準が上昇し、生産関数を通じて生産量Yも
上昇し、高い経済成長率となった。
つまり、戦争によって資本ストックが減少したのだから、定常状
態に戻るまでの間、高度成長となるのは当たり前という論理です。
でも仮にこのロジックに乗っかったとしても、全然当たり前では
ないと思います。
まず、貯蓄率が戦前と変わらないとする仮定は全然当たり前じゃ
ありません。戦争の前と後では、所得が大きく低下したと考えられ
ます。
しかし、生活必需品の消費は、それほど変わらないはずですから、
貯蓄率は戦前よりも下がったはずです(本当は統計データを参照す
るべきなのですが)。
それから、戦争の前後で生産関数の形状が変化しないと考えるの
も当たり前とは思えません。『組織の経済学マレニヨム no.022』で
取り上げられていた分権的市場という意味での「市場の失敗」の度
合が戦争によって高まり、生産要素市場での資源配分が非効率的に
なり、同じ量の資本ストックからもたらされる生産量は戦後の方が
戦前よりも小さくなった、と考えられます。
したがって、貯蓄率を維持し、生産関数の形状も維持した日本と
西ドイツは、やはり「奇跡」なのではないか、と思うわけです。
もちろん、ソローの成長モデルが考えるほど現実の経済は単純で
はありませんが、仮にソローモデルを正しいとした場合には、思考
実験として以上のようなことが言えるのではないかと思います。
長くなりました。この辺で失礼します。
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(^_^;)
どうも。毎度メールありがとうございます。
うーん、、、日本と西ドイツの奇跡の話のところを読み返してみ
ました(第二巻p16)が、どういう解釈をしたら妥当なんだろう?
ただ現時点でのボクの意見としては、貯蓄率が戦前より戦後の方
が低くなるという風には思えません。
たしかに戦後すぐのとんでもない物資不足の期間は低くなるでし
ょうが、その後は多分元の水準前後に戻るものだと考えられます。
もちろん貯蓄しても殆ど意味のない経済(たとえば途上国など)
だとこういうことは起こらないかもしれませんが、第二巻のp158
に載っているアービング・フィッシャーのモデルによると
「人々は現在と将来の状況を共に考えて現在の消費水準を決定する」
ということで、さらにp169では
「借り入れることができると考えられる金額が低ければ貯蓄率は上
がる(借入制約)」
というようなことが述べられているので、消費される財やサービス
が乏しいから人々がそれをさっさと消費してしまうとも言えないん
じゃなかろうか、、、、
(つまり手元にパンが一個あったとして、次にパンがいつ手にはい
るかわからない場合、すぐにそれを全部喰ってしまうものだろうか?
いやきっとパンを大事に「食い延ばす」だろう、という話です)
また生産関数についても、戦後が戦前より悪くなるとは思えませ
ん。というのも必要な技術というのは権力が強く禁止しない限り後
退しないはずでしょうし。
つまり戦前は八幡製鉄所などのような大規模な施設で鉄を作って
いたのに、戦後は土法高炉のような小さな非効率な設備で鉄を作る
のが主流になるということは到底考えられない。やっぱり生産性の
高い製鉄所を建設し直してから鉄を作ろうとするでしょう。
このソローの成長モデルではNX=0だから、戦前にあった生産要素
は戦後も同じだけある(要するに国内にある物質量は不変で破壊さ
れただけ)という前提だから、その条件だと確かに最初の歩みは遅
々として進まないかも知れないが、結局高度経済成長期を経て貯蓄
率の決定する定常状態に至ることになるのではなかろうか?
、、、とボクは思うのですが。
もちろん現実には戦後の日本や西ドイツはアメリカから大量の食
糧援助を受けていたし、日本の新幹線や名神高速道路も世界銀行か
ら借金をして造ったそうだから、ソローの成長モデルで考えている
より経済の回復速度や経済成長の度合いが大きくなっているとは思
いますが(この借金は1980年前後に完済したとかいう話です)。
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とりあえずボクが書いた原稿の元ネタになっている部分の記述を
以下に引用してみます(第二巻p16)。
何か意見をお持ちの方はぜひメール下さい。メルマガ上で紹介さ
せて頂きます。(ハンドル・ネームも忘れなく!)
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■「ケース・スタディ:戦後の日本およびドイツの経済成長の奇跡」
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「(前略)・・・日本とドイツの戦後の経験(急速な経済成長)は
ソローの成長モデルの観点から見てそれほど驚くべきことであろう
か? 定常状態にある経済を考察しよう。
いま、戦争が資本ストックの一部を破壊したと想定する(k1<<
k*)。驚くべき事ではないが、産出水準はすぐに減少する。
しかしもし貯蓄率が不変であれば、経済は高成長の時期を経験す
るであろう。産出が成長する理由は資本ストックが低水準のときに
は、投資によって追加される資本の方が減価償却によって除外され
る資本よりも多いからである。
この高成長は、経済が以前の定常状態に接近するまで続く。した
がって、資本ストックの一部が破壊されると産出はただちに減少す
るけれども、それに続いて正常よりも高い成長が生じる。
経済ジャーナリズムでしばしば「奇跡」と書かれる日本とドイツ
の急速な成長は、戦争によって資本ストックが大量に減少した国々
に対してソロー・モデルがおおかた予想することなのである。
しかしながら日本とドイツの経済成長の説明はそれほど単純なも
のではない。これらの国々とアメリカの間には、経済的成果の鍵と
なるもう一つの重要な相違がある。日本とドイツはどちらもアメリ
カよりも産出のより高い割合を貯蓄し、投資している。
従って両国はアメリカと異なる定常状態に近づいている。各国の
間の相違をより完全に理解するには、異なる貯蓄率の効果を考察し
なければならない。」(終わり)